【ブックレビュー】少女(湊 かなえ)

      2016/09/15


面白かった!

一気に読んでしまいました。

また映画化する小説か!と、自分でも思いましたが、これは友達に勧められた小説で先日紹介した夏美のホタルに続いてしまったのは偶然です。

さてさて本題。

この小説を象徴するキーワードは何だろう?

「死」「友情」「青春」「夏休み」「女子高生」「冤罪」「自殺」「殺意」「嘘」「理解」「援交」「ねたみ」「裏サイト」「疑惑」「介護」「認知」「暴力」「小説」「思い」

思いつくままに書いてもこれだけの単語が出てきました。きっともっとよく考えれば倍くらい出てくるかもしれません。

あまり印象の良くない言葉の羅列に見えるかもしれませんし、これだけネガティブな言葉に囲まれていると、「友情」や「青春」もなんだか全然良いイメージに見えません。

「友情(正の数)」×「ねたみ(負の数)」=「建前の友情(負の数)」という感じ。

物語は2人の少女「敦子」と「由紀」のそれぞれの視点で書かれており、小説内で何度も視点(語り手)が変わります。

ただ、よくよく注意して読むと、視点が変わる所には「*」が打たれており、「*」の数によって、敦子・由紀のどちらの視点で書かれた内容なのかが分かる親切な構成になっています。

とは言っても先ほどあげたキーワードが示す通り、敦子と由紀は親友の間柄であるものの、ギクシャクした様子が描かれ、それぞれ過去にあった出来事に伴う「闇」を抱えています。

そんな関係が続く中、「人の死」に間接的に触れる事で、お互いが示し合せることなく「人が死ぬ瞬間を見る事で、何かを得られるのではないか?」という衝動に駆られ、それぞれ「老人ホーム」「小児病棟」に夏休みを利用してボランティアに行きます。展開としては、死体を探しに行く「スタンドバイミー」に近いかもしれません。

人が死ぬ瞬間が見たいと願っていて、それぞれのボランティア先に向かう2人ですが、なかなか死の瞬間に立ち会う事が出来ず、逆に自分の手で死ぬ間際の人間を救ってしまったりします。

そして、その行動一つ一つがその場に居ない親友に少なくない影響を与えていく展開を、テンポよく、自然な形で表現している所も、この小説を一気に読んでしまう一つの要因かと思いました。

合わせてこの物語りの面白さとして、「敦子」「由紀」、そして2人を取り巻く登場人物は決してコミュニケーションが上手な人とは言えない状況です。

ただ、「コミュニケーション=思いを伝える」としたときに、言葉にしても思いが伝わるとは限らない事、そして言葉で伝えてもその半分も伝わっていない事が応分にしてある事は、誰しもが経験する事であり、それは年を重ねれば重ねるほど、その経験から思いを伝える事を半ば諦めてしまう事も多くなる気がします。

そんな現実が所かしこに描かれつつもこの小説では、言葉以外の方法で思いが伝える事が出来る事や、当時は無理だったかもしれないが、時を経て伝える事で伝わる事もある事、何も救いが無いわけでは無い、という事も書かれており、読んでいて良い意味でも悪い意味でも「そうなんだよね~」と嘆息する事が少なからずありました。

そしてクライマックスでは衝撃の展開もありますが、伏線がキレイにまとめられて終わります。

恐らく、読み手の誰もが納得する形では無いと思いますが、個人的には決してもやもやする展開ではなく、変わらないものは変わらない。変わるべくものが変わったと理解し、スッと本を閉じる事ができました。

そうそう、この小説を代表する重要なキーワードを忘れておりました。

「因果応報」

も重要なキーワードですね。

私の中で良い小説に出会った時のパロメーターとしている「読後、本を閉じた時に総毛立つ」現象も起き、久しぶりの感覚を味わう事が出来ました。

少し脱線

小説の話とは少し脱線しますが、私の嗜好について少し書きますと、例えるなら洋画より邦画派です。

意味が分からないのでもう少し補足しますと、起承転結の進行の「結」の部分で、全てが丸く納まって大団円という話があまり好きではありません。

例えば、ヒロインがいて、敵が出て、強くなって倒して、kissして大団円ってのが最も苦手です。

それだけで洋画より邦画なのか?というと微妙ですが、これまでこの手の話をするときに一番言いたい事が伝わったのがこの表現なので何卒ご理解下さい。邦画の方が見終わった後も個々人でその後の展開などの解釈が異なったり、見ている側に「あなたはどう思う?」という形で投げかけられて終わる展開が多い気がしませんか?

ですので、私がいいなぁ。と思う小説などは、総じて人間の汚い所が出ているものだったり、どうしようもない現実は結局変わらなかったり、誰しもが幸せになって終わるという形ではなかったり。というものが大半です。

もしかするとマイノリティーな部類かもしれませんので、これに合わない方は恐らく私がおススメする小説や作品がまったく被らないと思います。これも多様性として、重ねてご理解いただければ幸いです。

まとめ

つらつらと思いを書いてしまいましたが、湊かなえさんの「少女」これはおススメです。

ここ最近私の中に無かった「この方の他の作品も読みたい!」というブーム、今回は「湊かなえさんブーム」が到来したようです。

ちなみに、映画は夏美のホタルに続き恐らくよっぽどの事が無い限り見ません。

公式HPをサッと見たところ、夏美のホタル並みの設定変更は見られなかったものの、予告MOVIEが「こんなシーンどこで使うのか?」という「?」が多かった事と(そのシーンがどこに使われているのか見たい!っていう気持ちも湧かなかった)、小説を読んでいる際に持った登場人物のイメージが、あまりにも映画の配役の方と離れていた事が理由です。

であれば、わざわざ映画を見て「そっちに引っ張られたくない」っていう事ですね。

まとめのおまけ

ちなみに、「十五少年漂流記」よりも完全に「蠅の王」派です。


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